【図5】
T31(標高約1950m;図0)の土層断面。
図6もみてください厚さ約80cmの泥炭質土層から9層10種類のテフラを発見しました。
写真左の白ラベルの層準にテフラがあります。
上から、榛名二ツ岳伊香保(Hr-FP;AD525-550)、
榛名二ツ岳渋川(Hr-FA;AD500-525)、妙高大田切川(My-Ot;4700年前)、
浅間平標山第1(As-T1;4900年前)、浅間平標山第2(As-T3;6300年前)、
妙高赤倉・浅間平標山第3(My-A/As-T3;6600年前)、浅間平標山第4(As-T4;6800年前)、
鬼界アカホヤ(K-Ah;7200年前)、浅間平標山第5(As-T5;7500年前)です。
また土層の下の岩屑層に浅間草津を認めました(図範囲外)。
My-A/As-T3は見かけ上1枚の薄いテフラですが、
実際は層相や岩石学的特徴が異なる2種のテフラが累重しています。
これは尾瀬ヶ原の泥炭層に挟まれるテフラX(阪口、1989:尾瀬ヶ原の自然史、中公新書928)と同一です。
尾瀬でも平標山でも、My-AとAs-T3の間に泥炭や土層が全く存在しないので、
長くとも半年以内に浅間・妙高両火山が噴火したと考えられます。
またAs-T1-T5が浅間前掛山から飛散したのはほぼ確かですが、給源山麓のテフラ層序との対比ができていません。
これらのテフラは、会津駒ヶ岳など平標山の周辺にも広く分布しており
(Takaoka and Kariya, 1998;Jpn. J. Forest Environ.)、
上越-東北南部の完新世タイムマーカとして有用です。1996年7月。
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