2005年3月 近況報告

 

2004年度後期は、通常の研究教育活動と教養委員長に加えて、戦略会議の一員にさせられたために、大学改革の嵐の目の中に飛び込んでしまった。

 

あおりを食ったのが授業のWeb化作業で、肝心のドイツ語に技術的な問題が多く、目下のところ頓挫している。代わりに?「文学C」の方はテクストの張り込みがないために、優秀な大学院生の嶋田さんのおかげでドンドン進み、前期分の講義10回分のWeb化が3月末に完成。残念ながらソフトの関係で学内のLL施設のイントラに限られるが、LL自習室で視聴可能である。将来的には、更に改善を試みてゆきたい。

 

学外では、2005年から始まる「ドイツ年」からみの企画のために、加速度的に忙しくなり始めている。2005年度のことは考えないようにしている。

 まずはドイツ現代戯曲選30本の翻訳企画の編集。3月にやっと仮チラシができた。4月のトゥリーニ「ねずみ狩り」の翻訳上演までには、三色刷の本格チラシを完成させる。もちろん翻訳も、まずは最初の三本を5月に出版予定。春と秋の独文学会でのシンポジウムに加えて、あから二つ、ドイツ現代演劇にかかわるシンポジウム企画が進行中。

 

それにもかかわらず、例年のように2月後半、ベルリンとウィーンに赴いた。寒かった。

 

2月15日 ウィーン、ブルク劇場 ネストロイ作『分裂した男』

  大人気のハックルとマイヤーのコンビだが、例によって二人のウィーン方言はわからない。爆笑ではなくて、クスクス笑いが常に響く。装置は構成的でモダンだが、演出はオーソドックス。

◎2月16日 ウィーン、アンサンブルTheater(小劇場)シュヴァープ作『刺激的なる輪舞』

 これは傑作の舞台。小劇場の空間をうまく使用して、エゲツナイ内容を上手に処理していた。

◎2月17日 ベルリン、ベルリーナー・アンサンブル ブレヒト作『アルトゥロ・ウィ』

  6月に日本に来る舞台をいち早く?ようやく・・・ようするにヴトケの舞台。

◎2月18日 ベルリン、ドイツ座 ハイナー・ミュラー作『ゲルマニア』

  客席に張り出した素の舞台の真ん中に9個の椅子が横に並ぶ。ささやきに地声がまざり、台詞の多様性を追求。

2月19日 ベルリン、シャウビューネ劇場 マイエンブルク作『エルドラド』

 森の中をリアルに造形。電子音楽が鳥の声のように。

○2月20日 ベルリン、フォルクスビューネ劇場 ヒプラー作『芸術と野菜』

  パフォーマンス・ダンスだが、ひたすらハチャメチャで、シェーンベルクの歌をプロの歌手が歌う周りで、それに一切関わらずに、十一名の男女が動き回り、わめき回る。ALSの患者を客席に配置して、その映像とワープロのコメントを正面に映写。

◎2月21日 ベルリン、シャウビューネ劇場、マクラス振り付け『Big in Bombay』 

  ボンベイでのワークショップで完成した振り付け。インドの都会での不安と孤独ということになるだろうが、日常の雑多さを誇張しながら、むしろ演劇的に示しながら、突然、ダンスアンサンブルになったりもする。スタイリッシュなハチャメチャ。

○2月22日 ウィーン、アカデミー劇場 オスカー・ワイルド作『人生はまじめ Bunbury

  イェリネクの新翻訳ヴァージョン。悪ふざけの多い喜劇だが、やはりキルステン・デーネは圧巻。登場すると空気が変わる。予習できなかったのが残念。

 2月23日、ウィーン、フォルクス劇場 ドルスト作『私、フォイエルバッハ』

  手堅いが、読んだときのおもしろさを越えられない。

 2月24日 ウィーン、ブルク劇場 ベルンハルト作『習慣の力』

 サーカスのワゴン車を舞台真ん中に置いて、終始、そこでの会話。広い舞台をわざと狭く使っているようで、せっかくのキルヒナーも達者なのだが、演出が平凡。

◎2月25日 ウィーン、ブルク劇場 ボート・シュトラウス作『道化とその妻』

 スリガラスで区切った室内を、回り舞台で巧みに見せながら、様々な空間処理。おしゃれな雰囲気が漂い、役者の安定した実力。

◎2月26日 ウィーン、アカデミー劇場 ハントケ作『Untertagblues

 題名は造語。一応「昼間のブルース」としておく。テクストの演出指示は、地名・駅名の映像表示以外は全て無視。横に並んだ五つの机に電子楽器と椅子。俳優の語りの振幅の大きさが、フォルクスビューネの俳優との相違と気づく。

 以上、12本でした。