近況 2006年4月

 

昨年は教養委員長の四年目に、新たに「新学部構想」が加わり、更に「ドイツ年」ということでの学外の企画、翻訳やら上演らや研究発表(5月、10月、11月)やらと押せ押せに幾つも重なり、ちょっと今までに例のないほどの忙しさでした。特に夏から秋にかけてがピークで、おかげで昨年後期の近況を書く余裕がなかったほどです。夏頃から、わたくしの「ガラスの胃」がついに反乱を起こして、全くアルコールを受け付けなりました。ご寛恕下さい。しかしそれ以外にはナントカ無事に過ごせたのですから、まあ良しとしなければならないでしょう。

今は、教養委員長が終わって、ちょっとホッとしています。この四年間に後回しにしていたドイツ演劇関係の仕事をボチボチ片づけなければなりません。

 

それでも2月には例のごとく二週間、ウィーンに行ってきました。今回はラインナップの関係でベルリンはお休みして、しかも後半はオペラを並べるというテイタラクでした。

 

2月16日 テネシー・ウィリアムズ『焼けたトタン屋根の上の猫』ブルク劇場 演出:アンドレア・ブレート。幕無し。なしくずしに召使い達の歌声で始まる。この手のリアリズムをやらせるとブルクの俳優のうまさが光る。特にフォスの父親の力量を感じさせるが、演出はひたすらマルガレート(ヨハンナ・ヴォカレク)の舞台で、やや細めの声ながら、しっかりと響く声での長広舌で広い舞台を縦横に動き回る。主人達が大騒ぎしているのを尻目に、五人の黒人奴隷達が後で退屈そうにしているのが印象的。

          2月17日 ライムント『浪費者』 ブルク劇場 演出:シュテファン・バッハマン

   冒頭、舞台一杯の階段に丸裸の女性が何人も脚を広げて横たわっていて、ちょっとビックリしたが、間もなく人形(ダッチワイフ)とわかった。階段がぐるりと回ると洞窟(これもヒワイなイメージ)、更に回ると金ピカの階段舞台。作品のテーマの現代性があらためて得心できるすぐれた舞台だろう。

 2月18日 ニール・ラ・ブート『das mass der dinge』演出:イゴール・バウアージーマ

  「くすぐり」の連続。バウアージーマの演出は装置や照明、映像の使い方などが、いつも驚くほど凝っている。

 2月19日 イプセン『人形の家』 ヨーゼフ・シュタット劇場 演出:カールハインツ・ハックル リアリズム表現の教科書。結末は「子はカスガイ」というわけで、観客席を埋めていたおばあちゃんたちは皆、一様に深くうなずいていた。

 ◎同日   ファスビンダー『マリア・ブラウンの結婚』 フォルクス劇場 演出:アントワーヌ・ウィデハーグ 映画の舞台化?と半信半疑で行ったのだが、これが大正解。フォルクス劇場は明らかにレベルアップしている。

 ◎2月20日 フランツォーベル『我らはメシアを求める』 アカデミー劇場 演出:カリン・バイアー  今回の白眉。イェリネク+シュヴァープのハチャメチャ舞台とテクスト。ものすごく大きな宿題をもらった感じで、ベルリン行きを取りやめた甲斐があったと思わせてくれた。

 2月21日 ネストロイ『クレーヴィンケル市の自由』 フォルクス劇場 演出:ミヒャエル・ショッテンベルク  「喜劇」の質の高さ。舞台処理のテンポの巧みさ。

 2月22日 ネストロイ『80分のタンホイザー』 ブルク劇場

  ネストロイ俳優ローベルト・マイヤーが八面六臂の大活躍一人語り(+唄い?)の舞台。

 2月23日 ミュージカル『ロメオとジュリエット』 ライムント劇場

   とにかくテンポの良さで見せる。疾走感がすごいのは、ダンスのレベルがものすごく高いからだろう。キャーキャー喜ぶ若者で一杯であった。

 2月24日 オペラ 『マルタ』 フォルクス・オーパー

 2月25日 オペラ ドニゼッティ『愛の妙薬』国立オペラ座

 2月26日 休み

 2月27日 ベーアフス『バス』 アカデミー劇場 演出:トーマス・ラングホフ

   昨年の話題作で期待したのですが、演出に冴えがなくて退屈。

 2月28日 ダンス 『チャイコフスキー 印象』 フォルクスオペラ座

 ◎2月29日 オペラ ヴェルディ『椿姫』 国立オペラ座