近況 2002年9月末

 

4月から教養委員会委員長などに選ばれてしまって、覚悟はしていたものの、7月一杯まで頭がクラクラする感じでした。会議会議会議・・・意見調整意見調整・・・いわゆる根回し等々。おかげで学生諸君には、ご迷惑をおかけしたこともあります。何しろ全科目の三分の一近くが、いわゆる教養科目ですから・・・

そんなわけで8月は(暑かったですねえ!)、ひたすら溜まっていた資料などを読みふけっていました。でも、やはり予定通りには進みませんでしたね。特に力を入れて読み上げたのは、レーマンのギリシャ悲劇論Theater und Mythosでした。名著ですが、随所にフランス語やギリシャ語の引用があって困りました。

この夏の収穫は8月末から9月上旬に立て続けに現れました。いずれもドイツ演劇に関わります。第一に若死にのファスビンダーによる『アレクサンダー広場』14回テレビ・シリーズの一挙上映。アテネ・フランスに二日間、延べ14時間の苦行でしたが、目と首と肩と腰の痛みに見合っただけの刺激に満ちた経験でした。ファスビンダーには、個人的にも思い入れがあります。大学院のころに、日本で初めて出版されたファスビンダー論の資料として、作品概要を下訳したことがあるからです。位置づけとしては、ドイツの寺山修司というところでしょうか?ただ、最近のドイツの舞台にはあまり上がっていません。

 第二がベルリーナー・アンサンブル公演『リチャード二世』(シアター・コクーン)。これも演出がクラウス・パイマンですから、私がずっと追っかけている演出家です。私の業績の1990年あたりに、日本で初めてのパイマン論を書いていますので、ご参照あれ。

第三が1970年代にほとんど神様のようであった演出家ペーター・シュタインによる『ハムレット』(新国立劇場)でした。ただ、ロシアの俳優を使った演出は、次々と繰り出される空間処理等のうまさ、職人芸の見本のようでした。これは、半分ほめて、半分はけなしているのです。個人的にはパイマンの演出の方が刺激的で好きです。

これに関しては、またメール・マガジンに書く予定です。

  さて、大学はこれからが一番忙しい時期です。来年度のカリキュラム編成等を決めなければならないからです。あああ・・・と空を見上げて嘆息する日々が続きそうです。ちなみに自宅の居間には、井伊直弼の言葉を書いて張ってあります。

        

むっとして戻れば庭の柳かな